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3/15 前年分の贈与税の申告期限

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贈与税の申告について

今回は、贈与税について取り上げます。贈与税は平成27年分より税率の引き上げが行われました。相続税と相まって近年話題になっている税目の一つです。
ここでは、贈与税の概略(暦年課税)と簡単な計算の流れを解説します。あわせて暦年課税ではありませんが、贈与税の申告である「相続時精算課税」についても簡単に触れて、イメージをつくる一助にしたいと思います。

そもそも贈与税って何?

贈与税は、一般に相続税の補完税といわれます。法律上も「贈与税法」というものはなく「相続税法」のなかに規定があります。相続税として国に入る税金の代わりに贈与の段階で課税をすることによりその補完を行っているのです。

贈与税とは、財産の贈与を受ける人に、贈与があった年の1月1日から12月31日までの一年間に受贈した財産の金額に対して課せられる税金です。贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、どちらかを選択できます。どちらも申告期限はその年分の翌年3月15日となっています。以下では暦年課税(一般贈与)を前提に説明します。

贈与税額の計算について(一般贈与)

贈与税の計算はシンプルです。基本は(課税価格-贈与税の基礎控除額)×贈与税の税率-控除額で算出できます。それでは申告書を用いて解説します。
例として、AさんからBさんに400万円の「一般贈与財産」の贈与を行った場合の申告書です。

  • 申告書の上部に納税者(受贈者)のB氏の氏名、住所等を、次項目の「Ⅰ 暦年課税分」「ⅱ 一般贈与財産分」上部に贈与者のA氏の氏名や住所等を記載します。
  • ②に財産の価額の合計額を記載します。なお財産の評価はその財産の種類によって国税庁の「財産評価基本通達」という規則に則り評価をして金額を確定し合計します。これが課税価格となります。
  • ③配偶者控除があれば記載します。贈与税の配偶者控除は婚姻20年以上の夫婦間で住んでいる居住用不動産を贈与した場合、基礎控除(110万円)の他に2,000万円までは課税しないとするものです。なお暦年課税の基礎控除額は110万円です(つまり1年間で110万円超の贈与を受けた場合には贈与税が課せられることになります)。例では差し引かれた⑥290万円が課税される価格になります。
  • 税額表(速算表)(国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm 参照)に照らし合わせて33.5万円を算出します⑩(⑧⑨は特定の場合のみ)。以上で暦年課税の計算過程 は終了です。贈与税の計算はシンプルですが、資産によっては財産評価が複雑になることがありますので、この場合には税理士などに相談してみましょう。
  • なお、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)へ贈与される資産については、「特例贈与財産」として、特例税率が適用されます。

資料1)贈与税の申告書

資料1

相続時精算課税制度について

贈与については、贈与を受けた人の選択により、上記の暦年課税に代えて「相続時精算課税制度」の適用を受けることができます。
「相続時精算課税制度」とは、60才以上の父母、祖父母からその相続人になるであろう子どもまたは孫に財産を贈与した場合、贈与税の基礎控除110万円に代えて2,500万円の非課税枠を設けて、これを超えた分に対して一律20%を乗じた金額を納付し、相続時にその贈与により取得した財産の価額と相続などにより取得した財産の価額を合計した価額を課税価格として計算した相続税額から、既に支払った相続時精算課税に係る贈与税額を控除した額を納付する制度です。

この制度は税率の高い贈与税率を適用せず、生前贈与分も相続時にまとめて精算して課税することにより、贈与税率よりも比較的低い相続税率となるため、高齢者の保有する資産を次世代に円滑に移転する効果があります。注意すべき点は、一贈与者ごと(例えば父、母ごと)の枠が2,500万円であることと、一旦この制度を採用したら「暦年課税」に変更はできないということです。

これを採用するための手続きは、最初の贈与の際の翌年の2月1日から3月15日までに税務署に対し「相続時精算課税選択届出書」を所定の書類を添付して提出することです。
この制度は平成15年の税制改正で創設されました。すでに施行後約20年が経過し、この制度を利用される方も増えてきました。次世代に早く財産を譲りたいが、110万円しかない基礎控除と高い贈与税率で贈与を躊躇する方にとっては大変有用な制度です。

ただし、暦年課税とこの相続時精算課税制度のどちらを採用するかで、納付税額の有利・不利が生じます。相続時精算課税の場合は贈与時の価値で評価しますので、もらう財産の価値が相続時までに下がる財産にはこの制度はおすすめできません。

資料2)相続時精算課税選択届出書

資料2

大きな財産の譲り渡しは長期間にわたって効率的に

贈与税は相続税と密接にリンクしていますので、大きな資産の次の世代への移転については単年のみでなく、長期間にわたって考えるのが得策です。その場合は、税理士等専門家に相談するなどして、合法的にムダのない財産の移転計画を立てることをおすすめします。

【参考】
  • 「令和5年分 贈与税の申告のしかた」 国税庁
    …必ず該当する各年分のパンフレットをお使いください。