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日商簿記検定の1級は、2級以下と大きく性質を異にしています。
2級以下ではいわゆる「簿記」の基礎知識と実務能力が問われるのに対し、1級では会計に対する知識や理解力が問われます。
財務諸表規則や企業会計法規も学び、1級合格者には税理士試験の受験資格が与えられます。
一般的な企業で経理実務を行うにあたっては、2級レベルの知識があればほぼ十分です。ですから1級取得を目指す人の多くは税理士や公認会計士の候補生、あるいは経理・会計・財務の管理職を目指すような人ということになります。
このような背景から「経理の実務経験があるが、転職の際に不利にならないよう資格を取っておきたい」というような方なら日商簿記2~3級を目指すのが一般的で、1級を目指す人は管理職へのキャリアアップ、あるいは会計・財務といったより深く経営に関わる部門への転身を目指したり、日商簿記1級の次に税理士の資格を取って税理士や企業内税理士への転職を目指す、というような上昇志向が強い方が1級受験者の中心となっています。
1級は、2級に比べて出題範囲が大幅に拡大されます。まず、2級以下にはない「会計学」という科目が登場し、工業簿記は2級では基礎知識を問われるにとどまっていたのがより実践的なレベルになり、原価計算も独立科目となります。また設問の傾向もひっかけ問題や応用問題が多くなり、知識だけでなく理解度・応用力も問われます。
試験科目は「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」の4科目で、合計3時間の試験となっています。合格基準は他の級と同様70%以上となっていますが、1級試験の特徴は「1教科でも40%未満の正解率だとその時点で足切りされる」という点です。そうした背景もあって、日商簿記1級の合格者はここ10年間のデータを見るとほぼ10%前後となっており、2・3級の合格率と比較するとかなり「狭き門」となっていることがわかります。
(資料引用:日本商工会議所・各地商工会議所Webサイト 「日商簿記 受験者データ」)
「足切り」ルールがありますから、苦手教科を克服して全教科でまんべんなく得点できるような勉強法が必要です。とはいえ出題範囲が広範ですから完璧を期すことは難しく、まずは各教科の重点項目を中心に勉強を進め、余力があればすそ野を広げてゆくという勉強法が望ましいでしょう。
ただし丸暗記が通用するような試験ではありませんから、勉強の効率ばかりを優先させすぎると「まるでわからない」という不得意分野ができてしまい、全体では合格点が取れても苦手科目で足切りされるリスクが高くなります。予想模試や過去問などから出題傾向の高い項目を割り出し、そのすべての項目で確実に合格点が狙えるよう、苦手な項目を優先してひとつひとつ克服してゆくような地道で着実な勉強法も必要かもしれません。
また現在お仕事をなさっている方が短期間で合格を目指すのなら、夜学の経理学校やオンライン学習など、専門の指導者についた方が安心でしょう。毎日数時間以上のまとまった勉強時間が取れない場合は、数年かけて1級合格を目指すという方も少なくありません。
日商簿記検定は例年2・6・11月の年3回行われますが、2月には1級試験はありません。このため6月と11月の年2回となっています。
1級受験者の数は1回あたりおよそ10,000~1.5万人程度。受験料は7,710円(税込)(平成29年度現在)となっており、合格率は10%前後となっています。 また試験時間は商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目合計で3時間です。なお「会計基準及び法令は毎年度4月1日現在施行されているものに準拠する」こととされています。
(資料引用:日本商工会議所・各地商工会議所Webサイト 「日商簿記1級」)