業界別経理のお仕事～小売業編～

小売業は「モノを仕入れて売る」という、商売の基本となる業態モデルですが、一言に「小売業」といっても様々な業種、業態がありそれぞれ特徴も異なります。

ここでは小売業全体の概要をつかみ、その経理事務の特徴について解説します。

小売業の定義と分類

「小売」とは、生産者や卸売業者から仕入れた商品を消費者に販売することをいいます。
そして、「小売業者」とは、小売を行う業者を指します。また、「何を売るか」という業種と、「どのように売るか」という業態とに大別することができます。
具体的には次のようになります。

• 業種別分類・・・精肉店、鮮魚店、青果店、菓子店など
• 業態別分類・・・百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど

上記のようにさまざまな業種、業態がありますが、小売業を「モノを仕入れて売る」と簡略化して考えた場合、経理事務の一般的な仕事は「仕入管理」「販売管理」「在庫管理」の３つに分けられます。

小売業における経理の具体的な仕事

小売業における経理に関する具体的な仕事を見てみましょう。
まず、最初に挙げるのは「仕入管理」です。小売業は、商品を販売するために商品を仕入れる必要があります。仕入管理の業務の流れは次のようになります。

1.見積依頼
　初めて取引をする場合や販売価格が変動する場合に行います。
2.購買契約の締結
　継続的に仕入先と取引を行う場合は、取引条件などを決めた上で「購買契約」を締結します。
3.発注業務
　仕入先へ発注を行います。 4.入庫・検収業務
　仕入先からの納品があったものに対し、品質などを確認・検収します。
5.支払締め業務
　請求される代金の確認をし、支払金額の確定を行います。
6.支払業務
　代金を支払います。

このようなプロセスにおいて一般的に経理事務では、5.6.の業務に携わることが多いようです。

次に、見てみるのは「販売管理」です。
販売管理とは、受注から出荷・納品、代金の回収までを管理することです。このうち経理事務では一般的に、代金の回収に関する部分に携わります。スーパーマーケットなど、現金販売が主となる業態では資金の回収は販売時に完了しますが、掛販売や手形回収による販売では債権の回収が必要なので、その管理も経理の大事な仕事となっています。

3つ目は「在庫管理」です。得意先からの受注、注文に対して納期どおり出荷するには、適切に仕入先から商品を購入しておかなければなりませんので、商品の在庫を管理する必要があります。具体的に在庫管理の業務を見てみましょう。

1.在庫受払業務
　日常的に商品の在庫の入庫、出庫の管理をします。
2.実地棚卸業務
　定期的に在庫の実数量を把握します。
3.購買依頼業務
　適切なタイミングで仕入先に商品の購買依頼を行います。

在庫管理については経理では関与する部分は少ないのですが、決算において実地棚卸業務の報告を受け、帳簿上の在庫数と実地棚卸時の在庫数との差異の把握及びその発生原因の調査といった仕事があります。

小売業特有の会計処理、売価還元法

最後に、小売業特有の会計処理、「売価還元法」について説明しておきましょう。
経理には期末在庫の価額（在庫数量×単価）の確定（＝期末商品の棚卸高の確定）という重要な仕事があります。　

小売業では、今期いくら儲かったのかを決算期ごとに確定させる必要があります。
算式で表すと、売上高－原価＝利益（＝儲け）です。売上高は売上時にすぐに決まりますが、原価は、期首の繰越商品（A）＋+期中の仕入原価（B）－期末の在庫商品（C） で計算されます。
期末には（A）も（B）もすでに決まっていますから、（C）を確定させれば、利益が確定することになります。

期末商品の棚卸高の確定は（在庫数量×単価）でしたが、スーパーマーケットなどの取扱品種の多い業種では一品ずつの単価計算は煩雑です。

そこで用いられているのが、異なる品目を値入率（儲けの割合＝利益率）などの類似性にしたがってグループ化して原価率（＝１－利益率）を計算し、期末商品の売価合計額にこの原価率を乗じることによって期末の棚卸資産の評価額を決定する「売価還元法」です。

これは棚卸資産の評価方法の一つで、スーパーマーケット、デパートなどの小売業のように、「商品ごとに原価を調べることが難しいけれども、値札を付けて販売しているため売価は調べやすい」という業種に適した方法と言えます。

小売業と言ってもその業種、業態は多種多様であり、その経理処理も個々の会社によって異なるものです。個々の会社の採用している経理処理を覚えていく、ということが必要となりますが、日商簿記3級レベルの知識を持っているとなおよいでしょう。

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