業界別経理のお仕事～エネルギー・資源産業編～

私たちの暮らしを支えるエネルギー・資源産業

今回は、私たちの暮らしを支えるエネルギー・資源の業界を取り上げます。私たちの生活や産業の発展には電気、ガス、石油といったエネルギーはなくてはならないものです。
以下では電気、ガス、石油といったエネルギーを扱う業種の事業内容と特有な経理処理について説明します。

エネルギー・資源産業はどんな仕事？

エネルギー・資源産業は、大きく電力業・ガス事業・石油事業に分類されます。
電力業は、発電所で電気を作り、それを送電し最終的に私たち消費者に届けるまでの設備の一切を所有しており、膨大な固定資産を必要とする産業です。

固定資産に投下した資金を回収し安定した電力供給を行うには長期にわたって収入が保証されなければならないため、わが国では電力を供給するためにかかった原価に一定の利益額を加算した料金設定をすることができる総括原価方式がとられています。
電力業では収入（売上）は安定的に保証されており、もっぱら膨大な固定資産の管理・処理する会計処理に特徴が見られます。

ガス事業は原材料の調達からガスの製造、供給、販売に至るまで一貫した経営になっており、ガスの製造設備から供給設備まで巨大な固定資産を所有します。また電力業と同様、総括原価方式が採用されています。

石油業はまず石油を掘削することから始まります。
原油を採掘するためには、産油国政府などとの契約が必要です。
次に採掘した石油を精製します。精製にあたって同一種類の原油から複数の油種が精製されます。

そして、最後に精製した油種を消費者に販売します。石油を販売する営業所（ガソリンスタンド）は各所にあり、石油業の営業所関連の固定資産も多額になります。
なお、ガソリンスタンドで最も重要な資産は石油タンクです。ガソリンスタンドを建設する場合にコストが一番かかります。

経理の仕事は他業種と変わりない

電気事業では「電気事業会計規則」、ガス事業では「ガス事業会計規則」という会計の基準があり、これに従って処理されます。一方、石油事業にはこのような業種特有の会計基準はなく、他業種と同じく一般に公正妥当と認められる会計基準などに従います。

それぞれ細かな処理の違いはありますが基本的な経理の仕事は他業種と大きく異なることはなく、簿記の知識があれば十分に理解することができます。

また最近では会計ソフトが発達しているので、仕事はパソコンへの仕訳入力が主なものになります。
仕訳を入力すると自動的に総勘定元帳、補助簿（補助元帳）及び試算表が同時に作成されます。
決算期に決算整理仕訳を行い、決算書を作成するという流れも変わりありません。

事業ごとの独特な会計処理を理解しましょう

固定資産を多く所有している電力業やガス事業では、減価償却以外に減損会計が適用されます。
減損会計とは、過大に評価された帳簿価額を減額することにより将来に損失を繰り延べしないために行われる会計処理をいいます。

この処理については「固定資産の減損に係る会計基準」に従って処理されます。
手順としては複数の固定資産をグルーピングしてひとかたまりの資産群と想定し、一定の方法によってこの資産群に減損の兆候があるかを判定し、その減損損失の金額を認識し測定します。
損失の金額は損益計算書の特別損失項目として表示されます。

また電力業ではこれ以外にも、特別な引当金が計上されることがあります。
その一つの例に渇水準備引当金があります。
発電するには水力、火力、原子力などに頼ることになりますが、渇水準備引当金とは、発電量を一定に保つため、自然の影響を受ける水力発電の不安定性に備える引当金で政策的に認められているものです。

石油業においては、その重要な固定資産である石油タンクの処理に特徴が見られます。
石油を販売するガソリンスタンドは一般には土地を借りて設置されますが、地下には石油タンクを埋めて営業します。

賃貸契約終了後は借主である石油業者は建物などを取り壊し、原状回復義務を負います。
これを資産除去債務といいます。具体的にはスタンドの設置時に、将来の契約満了時の取り壊し費用を予め見積もり、これを現在価値に割り引いた額を負債として計上します。
少し複雑ですが、このような処理もあるくらいの感覚で捉えておいてください。

特殊な経理処理は少しずつ覚えていこう

エネルギー・資源産業は業種独特の経理処理が多くなりますが、特殊性が強い分、この業界で働き、経理の全容を身につけると、自身の大きなスキルアップにつながります。
また基本となる一般経理の知識のある方なら特有の会計処理の理解は難しくありませんので、仕事に従事しながら身につけていきましょう。

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