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今回は、化学産業を取り上げます。
主に医薬品を除く化学製品を製造する会社を前提に説明したいと思います。
化学産業は化学反応を利用して製品の製造を行う業種であり、他の事業に原材料となる製品(例えば、石油やガスを原料にした合成樹脂や合成ゴムもしくはプラスチックなど)を供給する場合と、消費者に販売する製品(例えば、石けんや洗剤もしくは化粧品など)を供給する場合があります。
しかし複雑になるので以下では供給先を区分せず化学製品の製造業として説明を続けます。
化学産業では化学反応をおこして製品を製造するため、必然的に大規模な製造設備を有することになります。
また化学製品の原材料は鉱石、石炭、ナフサ(原油を精製したもの)などですが、日本国内ではほとんど産出されないので海外から調達することになります。
そのため海外での原材料価格の変動やと為替の変動による影響が大きい産業です。特に石油を原材料にする化学産業も多く、産油国の政情や海上輸送の安定性にも影響を受けるので、不安定要因が多いというのもこの業種の特徴です。
派遣で経理事務を行う場合には、他業種と大きく異なることはありません。
ただし化学産業は製造業に分類されるので原価計算の若干の知識も必要とされます。
化学産業では同種の製品を大量に反復継続して製造するので総合原価計算が採用されており、その手順は大まかにいうと三段階に分かれています。
第一段階で製品製造のための原価要素である材料費、労務費、経費の計算を行います。第二段階で各製品に共通して発生する製造間接費を各製品に振り分け、製品ごとの各原価要素(製造原価)を集計します。第三段階で毎月の完成品原価と月末仕掛品を按分計算することによって、製品一個あたりの原価(コスト)を計算します。
また、化学産業では製造される製品の特殊性からこの第三段階の中で少し変わった計算を行う場合があります。それは連産品と副産物の計算です。
連産品とは、同じ原材料を使って、同じ作業工程から必然的に生産される種類の異なる製品で、どれも経済的価値が高く主製品として販売できる製品のことをいいます。
例えば原油を精製するとガソリン、重油、灯油、軽油などが一定の割合で同時に生産されます。
この場合、製造原価はそれぞれの製品が産出されるまで共通して発生します。
これを結合原価といい、一定の基準に従って各製品に配分することによって各生産物の原価を計算します。
一方、副産物は、連産品と同様、同じ原材料と同じ作業工程から必然的に生産される異種の製品ですが、主産物に比べ経済的価値が低く副製品として販売される製品のことをいいます。副産物は重要性が乏しいのでわざわざ原価計算を行うことはせず、その見積売却価額または再利用による見積原材料節約額を副産物評価額として主産物の製造原価から控除します。
化学産業は化学反応をおこして製造を行うので、このように一般的でない原価計算方法も理解しておくとよいでしょう。
化学産業は、大規模な生産設備を常時稼働して生産を行います。このため修繕にあたってもその金額及び規模が大きくなります。一般に化学産業は年に一度程度を目安として生産ラインを停止しメンテナンスを行うほか、数年に一度は大規模修繕を行います。
この修繕などの資金繰りや生産ライン停止による売上の低下などの分析把握も経理の仕事に含まれる場合があります。なお近年では定期修繕に備え、自社の生産ラインの停止中は他企業から同等製品を納品してもらうよう、相互に契約を取り交わすというタイムスワップという手法も多く取り入れられています。
また、生産設備(固定資産)の会計では減価償却によって時の経過に従って毎期費用化していくのが一般的ですが、ある一定の条件の下では減損会計が適用される場合もあります。
減損会計は(固定)資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件の下で将来に損失を繰り延べないために帳簿価額を減額する会計処理をいいます。
経理で仕事をする場合は、減価償却だけでなくこの減損会計に対して若干の理解があることが望ましいです。
化学産業は、製造業の一種ですので商業簿記と原価計算(工業簿記)の知識は必要かと思います。
ただし、上述した連産品の計算や減損会計の処理は少し特殊ですので、仕事のなかで身につけていけばよいのではないかと思います。
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