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Column –経理に役立つコラム-

業界別経理のお仕事~造船業編~

造船大国日本

業界別経理のお仕事~造船業編~日本の造船技術は高品質で世界有数の造船大国といわれています。現在は製造コストの点から近隣の中国、韓国に受注量では遅れをとっていますが、円安の影響や高い技術力が見直され、日本の造船業界は勢いを取り戻しつつあります。
今回は業界の特徴と業界特有な経理処理などを説明します。

造船業とは?

造船業とは、海運会社などから注文を受けて船舶を製造、もしくはその修理などを行う事業です。
船の種類はたくさんありますが、一般に造船業といわれる会社はタンカーや大型客船、コンテナ船など巨大な船舶を製造しています。このため造船所では大型クレーンやドック、船台など大型の設備を所有します。

また、造った船舶の売上先は日本のみならず、全世界にわたります。
したがって輸出の占める割合が高く、海外の景気状態や為替の変動による影響が大きい産業です。

その他、大型船の場合は必ず受注生産形態での製造になりますし完成納品までの工期も長期間(通常1年から3年くらいです)にわたります。つまり一船一船がオーダーによって造られ、それぞれの受注契約に基づき原価計算や利益管理が行われることになります。

まずは原価計算を理解しよう

経理の仕事としては造船業も基本は製造業ですので工業簿記(原価計算)は理解しておく必要があります。
そこで原価計算について説明します。原価計算には総合原価計算と個別原価計算の2つがあります。

受注生産の場合に適用されるのは個別原価計算です。個別原価計算では、顧客から注文を受けると、その注文内容を記載した製造指図書を発行し、これに基づいて製品を製造します。また、製造指図書の発行と同時に原価計算表を作成し製造指図書ごとに製品の原価を集計していきます。

この計算では第一段階で費目別原価計算を行います。
費目別原価計算とは製品の製造のために消費した原価要素(材料費、労務費、経費)を直接費と間接費に分類測定する手続きです。

次に第二段階として部門別原価計算を行います。部門別原価計算は費目別に計算した原価要素のうち、製造間接費を発生した場所別に分類集計する手続きをいいます。

最後に第三段階として製品別原価計算を行います。製品別原価計算は、製品ごとに原価要素を集計し、製品単位あたりの製造原価を計算する手続きです。
この製品別原価計算で製品指図書ごとに製品の原価を集計していきます。

業種独特の会計(工事進行基準)を理解しよう

経理の仕事は一般的な簿記の知識で対応できますが、注意を要する点もあります。
いわゆる製造業では製品の製造後、引き渡し時に売上を計上します。
しかし造船業では製造期間が長期にわたり、事前にその請負額(売上額)が確定していることが多くなっています。このような取引形態では一定の要件を満たした場合、いわゆる工事進行基準によって売上を計上しなければならないこととなっています。

少し難しくなりますが、ここでいう一定の要件とは「成果の確実性」の有無です。
通常、造船業では受注時に顧客との契約により受け取る金額が確定します。また顧客の指図に基づいて工事を進めていき完成後、船舶を引き渡します。この一連の取引自体が確実に見込まれるかどうかを「成果の確実性」といいます。
船舶製造の契約では、工期中であっても取引に「成果の確実性」が認められる場合には工事進行基準を適用し、成果の確実性が認められない場合には引き渡し時に売上を計上する工事完成基準を適用します。

では、工事進行基準とはどういうものでしょう。この基準は本来なら引き渡し時に計上する売上を、決算期末に工事の進捗度合いによって、工事収益の一部をその決算期の損益計算書に計上する方法です。
原則的に長期間にわたる造船請負契約では、すでに受注額は確定しているので工事の進捗度合いによって売上などを漸次計上していく方法は、実は一番実態に即しています。

また造船請負契約の場合、契約時以降から工程ごとに順次対価の決済が行われ、その工事収益の資金的な裏付けも確保されています。一般的には対価の決済は契約時、起工時、進水時、引き渡し時に分割して行われます。
以前は日本の会計基準ではこの工事完成基準と工事進行基準は選択適用することができたのですが、現在では要件を満たした場合には必ず工事進行基準を採用しなければなりません。

製造業会計の知識も身につけましょう

造船業は、製造業の一種ですので工業簿記(製造業会計)の知識は必要になるでしょう。
経理の基本業務は一般簿記(商業簿記)で対応でき、必要とされる知識の目安は日商簿記2級程度です。それ以外の特殊な会計基準については、会社が採用している処理を覚えながら実務を通して少しずつ身につけていきましょう。

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